NSTニュース
NSTニュースは、毎月第3水曜日に開催していますNST委員会における学習内容を院内の皆様にも知っていただきたく、お配りすることにしました。メンバーが交代でプレゼンした内容ですので、ご指導・ご鞭撻のほど、宜しくお願い致します。
経口補水療法(ORT)とは?
「経口補水療法」とは、Oral Rehydration Therapyのことで、点滴に代わり、電解質・糖質を含む経口補水液(Oral Rhydration Solution)を経口摂取することによって、脱水の治療・予防を行う療法です。
全身麻酔をする時には手術前夜から飲食禁止という考えが主流でしたが、ASA(American Society of Anesthesiologists)のガイドラインでは、手術の2時間前までなら透明な飲み物(clear liquid):[水、紅茶、ブラックコーヒー、炭水化物含有飲料水、果肉のない果物ジュース]を摂取可能とされています。
【投与例】摂取した量は確認する。
| 手術室入室時間 | 前日夕食時 | 当日 | 最終飲水時間 | |
|---|---|---|---|---|
| 当日 | 当日入院(原則として午後の手術室入室) | 麻酔科術前外来初診で配給 500ml×3本 |
配給分を前夜から継続して手術入室3時間前まで飲水可(自宅から継続して自己管理) | 手術入室 3時間前まで |
| 午前 | 例)午前9時 | 麻酔科術前外来で配給 (翌日朝食分) 500ml×2本 |
前夜の配給分を継続して午前6時まで飲水可 | 例)午前6時 |
| 午後 | 例)午後1時 | 麻酔科術前外来で配給 (翌日朝食、当日昼食分) 500ml×3本 |
前夜の配給分を継続して午前10時まで飲水可 | 例)午前10時 |
*京都第一赤十字病院麻酔科
経口補水液(ORS : Oral Rehydration Solution)
水と電解質をすばやく補給できるようにナトリウムとブドウ糖の濃度を調整した飲料です。ORS による水・電解質の補給は、点滴のような特殊な器具や技術が不要なので、安全かつ簡便という利点があります。 状態が安定していて経口摂取が可能な方の水・電解質補給方法の一つとして役立てられています。
ORTのメリット
患者
- 点滴ラインがないため患者の行動制限がなくなる
- 自宅で実施することができる
- 脱水の予防
- 不安・口渇感・空腹感の軽減
- 術後のインスリン抵抗性の減弱
- 術後悪心・嘔吐の予防
- 免疫能の維持
- 術後罹病率の低下
医療者
- 点滴をするための医薬品や医療器具、スペースが不要である
- 医療廃棄物が出ない
- 医療コストが下がる
適応
- 麻酔前投薬が不要で、経口補水療法を了承された患者
- 麻酔科医が許可した患者
慎重投与例
- 上部消化管(胃、食道など)、肝胆膵に関する手術の既往のある患者
- 消化管の動きが悪いと予測される患者
@高度肥満:BMI‐35以上(特にマスク換気困難が予想される症例)
A摂食嚥下障害がある場合
B上部消化管閉塞、イレウス症状 - 誤嚥の危険がある患者
@食道疾患、誤嚥、反回神経異常
A脳圧亢進症状、高齢で80歳以上 - 高度な挿管困難が予想される患者
- 手術前に鎮静剤の投与を必要とする患者
- 飲み方を理解できない患者
- 透析患者
禁忌症例
- 患者が拒否、または点滴を希望した場合
- 主治医・麻酔科医が適当でないと判断した場合
- 嚥下困難・狭窄症状等で経口摂取不可能な患者
*適応、慎重投与例、禁忌症例は京都第一赤十字病院麻酔科参考
術前の禁飲食が守られなかった場合
- 麻酔導入の延期
- 麻酔導入法の検討
ERAS(enhanced recovery after surgery:術後患者回復力増強)
エビデンスに基づく術後回復能力強化プログラムのことで、外科・麻酔科・コメディカルの協力により、入院から退院までを一貫して管理するチーム医療。
ERASプロトコールでも、腸管洗浄を中止し、これに伴う脱水を防止するとともに麻酔導入2時間前までの飲水を推奨し、特に絶飲食に伴う飢餓は代謝の恒常性を乱すため、麻酔導入2時間前までの炭水化物含有飲料水の術前補水を推奨している。

参考文献
@「手術前の体液管理における術前経口補水療法」 京都第一赤十字病院 麻酔科
AOPE nursing 2012vol.27
B術前の体液管理における経口補水療法の標準化 月刊ナーシング vol.30 No.14 2010.12
CORT FORUM 脱水と経口補水療法の基礎知識
D優しい体液管理―輸液療法から経口補水療法へ“Change”―
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部栄養学科 准教授 谷口英喜先生
EERAS(enhanced recovery after surgery)プロトコルとそのエビデンス 宇佐美 眞、濱田 康弘、三好 真琴
F術後の回復力強化プログラム(ERAS:Enhanced Recovery After Surgery) C.H.Dejong(Netherlands)&J.Nygren(Sweden)
GASAガイドライン
[文責] 手術室NST委員 清水奈津樹
[監修] 小山 広人 足立香代子




