船員ほけんVol.739
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14品川シーズンテラス健診クリニック 院長 櫻井 裕肥満肥満症「肥満」は健康診断を受けるたび聞く方もいると思われます。通常、肥満はBMI(Body Mass Index)が 25 以上の場合に用いられます。この BMI とは身長と体重から算出される指標の一つで、体重(kg)を身長(m)の 2 乗(kg ÷(m× m))で割ったものです。その人の身長を一辺として構成される正方形の面積の上にどれくらいの体重が存在しているかを見るものです。同じ身長なら体重の重い人が高い数値を示し、体重の少ない人は低い数値を示します。ところで、体重というのは体を構成する全ての物質の総合計の重量ですから、脂肪に比して重い重量を呈する筋肉や骨などが多いと、同じ体積(同じ体型)の人に比して BMI の数字は多くなります。一生懸命運動してスリムになって(細い体型になって)、脂肪の代わりに筋肉が多く付くと体重が増えるため BMI が増加することになります。保健指導に従って、一生懸命運動した結果、筋肉質になったら BMIがさらに増加して、保健師さんから注意を受けるなどという奇妙な現象が生じることになります。「肥満」が健康診断の場で目のかたきにされるのは何故なのでしょうか?食料が十分に行き渡らなかった時代には太っていることは富の象徴であり、決してマイナスイメージのものではありませんでした。しかし現代の日本のように十分な食料がいつでもどこでも手に入る状況では、食物を過剰に摂取し、かつ日常の運動量が減ったために様々な病気を引き起こしてくることがわかってきました。すなわち、「肥満」そのものが罪なのではなく、「肥満」と一緒に発生してくる病気が問題なのです。「肥満」と一緒に病気がある場合、「肥満症」という概念になります。どのような病気かは図をご覧ください。多くは健診などでよく見つかる病気ですが、睡眠時無呼吸症候群や肥満関連腎臓病などはあまり聞いたことがないかもしれません。特に睡眠時無呼吸症候群は専門的な検査が必要なこともあり、一般の健診項目には馴染まず、専門の医療機関で検査を受けるのが一般的でしょう。肥満症は病気という考え方になりますので、治療が必要になります。肥満症の病気が肥満と関連している以上、治療の基本は減量になります。この時、ついつい BMI の数値に目が行ってしまいますが、治療の目的は内臓脂肪の減少であることが重要です。食事、運動、行動療法などライフスタイルの改善を目指します。内臓脂肪が減ったか否かを正確に知るには CT などで精密に計測することができますが、お金もかかりますし、被曝線量も気に なります。大まかな目安としては腹囲が減ったか否かを計測し判断します。安静立位、軽い呼気状態で、臍(へそ) の位置、地面に水平に巻尺を体幹に巻き腹囲を計測します。この時、極端に息を吐く、お腹を意識的にへこますなどはルール違反です。自分の病気、体調のチェックですから自然な形で計測し、その推移をメモしておくことが重要です。現体重の 3% 減、可能であれば内臓脂肪がなくなることによる体重減を目指し、じっくり取り組んでいく必要があります。肥満、肥満症、メタボリックシンドロームの話健 康 広 場

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