> ゜)))彡 三月三日、上巳の節供と貝16おさかなマイスター認定№0083 田 口 成 子おさかなマイスター認定№0083 田 口 成 子料理研究家ひな祭りは春の訪れを感じます。女の子の節供と言われるように、ひな人形や桃の花を飾り、祝いの膳を準備される方も多いと思います。そんなひなの節供に作られるハマグリの吸い物は意外にもかなり古くから食べられ、現代に繋がっています。古くから日本人は貝類を食べていたようで、縄文時代の貝塚から多くの貝殻が見つかっています。特にハマグリが好まれて圧倒的に食べられていたようです。面白いことにそのハマグリの貝殻の特徴を生かした「貝合わせ」遊びが平安時代の貴族の間で行われていました。大形のハマグリの蝶つがいをはずし、貝の内側に源氏絵、花鳥、和歌、器物などを極彩色や金箔で描き、左右一組の文様を合わせるというものです。貝を合わせるには伏せた貝の形や色、斑紋などにより同じ貝を見つけ内側に描かれているものと合わせるという遊びです。左右の合う貝は一組しかなく、他の貝では絶対に合いません。江戸時代には女子の遊びのひとつとして一般化されました。貝殻は違ったものとはうまく合わないことから、夫婦の結びつきの象徴とされました。このような縁起の良いものがひな祭りの吸い物として用意されました。ハマグリは北海道南部から九州の淡水の影響のある内湾の砂泥地を好んで生息し、栄養をたっぷり蓄えた 3月~ 4 月が旬です。現在では日本各地で激減し、熊本県などで少量の水揚げがされていますが、多くは輸入品(シナハナグリ)です。成長は 1 年で 2cm、2 年で 3cm なので 7cm ものハマグリはかなりの年数が必要です。高級になってしまったハマグリですが、肉は柔らかく美味しく、酒蒸し、焼き物、シチューなどに使われます。ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝の汁を作る時にはぜひ昆布を使ってほしいです。貝類のコハク酸と昆布のグルタミン酸で味がグンと良くなるからです。最近は家庭でも昆布を使うことが少なくなってきましたが、伝え残していきたい食材のひとつです。昆布の国内生産の 95%が北海道沿岸です。近年、海水温度が上がってきているので、生育が心配されています。日本の料理の中で昆布がだしとして活躍するのは鎌倉時代からです。仏教がもたらした寺院の精進料理が大きく影響しています。精進だしや煮物、揚げ物と色々と使われ、特に胡麻油で素揚げされた昆布は栄養価も高く貴重な料理とされました。江戸時代になり北前船の日本海交易の時代に入り、松前にも藩が置かれ、北海道か第 2 話魚を食べ続けたい私たち三月三日、上巳の節供と貝
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