船員ほけんVol.741
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12三池山古墳の石棺清水の町並み「清水」の町の歴史はさらに古く、神話の時代から登場する。清水市街地にある「矢倉(やぐら)神社」は、西暦 100 年頃、景行(けいこう)天皇の子である「日本武尊」が東国征討をおこなった際、軍営を布き、武器庫を置いた場所と言われる。矢倉神社の創建は、仲哀(ちゅうあい)天皇の御代に日本武尊と景行天皇を祀ったのが始まりという。この神社には、天正 18 年豊臣秀吉が小田原出兵の際、勝利を祈願し、太刀を奉納したという言い伝えも残る。清水の町の北側、標高 55 メートルの丘の上に、三池平(みいけだいら)古墳がある。古墳時代中期(5 世紀後半)に作られた前方後円墳で、全長 65 メートル、後円部径 43 メートルある大きな古墳であり、この地域一帯を治めた豪族の墓と考えられる。この古墳からは、成人男性の骨、装身具類、鏡、武具など時代を知る貴重な資料となるものが発掘されている。この古墳は、昭和 30 年代にみかん畑で作業をしていた農業者が、偶然発見したもので、盗掘されず貴重な資料が発見され、出土遺物は静岡市埋蔵文化財センター(静岡市清水区横砂東町)で保管され、一部展示されている。三池平古墳からは、清水の町と駿河湾一帯を一望することができる。古代、この地域を支配した豪族が、死後もこの地を見守るために作られた聖なる場所なのであろう。普段、生活している町でも少し目先を変えると、歴史を感じさせる遺跡があるものである。初夏の一日、暮らしている町の歴史を調べ、その場所に立ってみるのも面白いだろう。

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