船員ほけんVol.746(2026年3・4月号
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11温泉の近くでたたずむ猫朝日に向かって別府の港から船が出ていくつきになり、別府から遠方に通勤する人も多く、かくいう筆者も一時間かけて別府市から大分市に通勤していた。日本最大級の観光都市・別府市と石油コンビナートや製鉄所のある工業都市・大分市とは隣り合わせで、別府に住んで大分で働くビジネスマンは意外に多い。別府では自宅にも温泉を引くことが可能だ。温泉給湯会社が数社あり、一般家庭に配管で温泉水を給湯してくれる。自分で温泉を掘ったり所有したりするのは維持が大変だが、温泉給湯会社と契約すれば月数千円から一万円余で家に居ながらにして温泉に入れる。料金は従量制でなく固定制のため、浴槽の大きさによって決まる。いわば使い放題の「温泉サブスク」なのだ。湯をチョロチョロ流しっぱなしにしている家庭も多く、常時温泉に入れる。ヘタに湯を止めると管が詰まるのだ。世界で一番、温泉の湧出量が多いのはアメリカの「イエローストーン国立公園」とされる。第二位が別府である。イエローストーンでは温泉はほぼ利用されず、実質的に世界一の「温泉地」は別府である。湧出量も多いが、利用件数も多い。一般人の入れる温泉が約 400 箇所あり、そのうち 100 箇所ほどは共同温泉である。共同温泉は自治会の所有や管理が一般的で、一階部分が温泉、二階部分が公民館、との構造がよく見られる。湯の有る無しは違えど両者とも地域の集いの場、憩いの場だ。面白いことに共同温泉の近くには地域猫も多い。風呂上がりにタオルを首にベンチで涼み、猫を撫でるお婆ちゃんを見かける。別府は猫密度の高い町で、「別府に着いたら 10 分以内に猫に出会う」との説があるほどだ。概して、元気な温泉地には猫が多い。温泉宿とは人を受容する商売であり、猫と共存できる懐の深さは人をも癒すのだろう。 さて、共同温泉である。立派で大きな共同温泉も魅力的だが、風情があるのは自治会などが運営する地域の小さな共同温泉だ。住宅街の路地にある。男湯と女湯の入口は隣り合っており、その中間に湯守さんがいたり料金箱があったりする。そこで百円か二百円かの料金を払う。月に千円前後を支払う会員にもなれる。名前を書いた木札がもらえ、それを番台に置いて入場する仕組みで、現金払いの一見さんよりも偉くなった 船員ほけん 2026 . 3 . 4

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